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すべての記事は⇒こちらから介護福祉士とホームヘルパー、資格取得要件の見直し(1)
介護福祉士(ケアワーカー)は数千時間に迫る膨大な時間と非常な努力を費やして得られる資格であり、介護業界の中心的存在となるプロフェッショナルとして、資格取得までの努力に相応しい待遇を、本来なら得られてよいはずです(介護福祉士については 資格の概要と、有資格者の現状(1) ご参照)。
にもかかわらず、介護業界の全般的な人材難を背景として、介護福祉士の多くが介護施設の現場において長時間労働とならざるを得ず、その肉体的・精神的負担に比べ、残念ながらこれまで社会的地位・給与面において報われない状況が続いています。
厚生労働省の平成17年(2005年)調査によれば、介護施設で働く介護福祉士の割合は、介護職員全体の38.1%に達しています。
また 介護予防関連の資格と現状 でも記したとおり、介護福祉士の資格取得者47万人中の半数近くは、介護業界以外の仕事に就いているのが現状です。
このため、介護福祉士および介護業務従事者の待遇改善に向けた政治的な試みがいまも続いていますが、彼らの待遇・報酬をあげることはすなわち、その源泉である「介護報酬の引き上げ」(ひいては、被保険者の支払う介護保険料の引き上げ)を意味することから、事態がなかなか大きく進んではいないのが現状です。
その一方で人手不足が慢性化し、人口の高齢化もますます進んでいることから、団塊世代が後期高齢者となる2025年までに、新たに30万人程度の介護職が必要ともいわれています。
対策の一環として、すでに外国人介護士・看護師の受け入れも始まっています。
(現在の状況については、資格の概要と、有資格者の現状(1) ご参照。)
また、問題の深刻化がささやかれる「認知症介護」や「老々介護」など、これまでの身体介護だけでは対応できない状況が出てくるなか、新たな介護サービスへの対応ができる人材の育成も必要と見込まれています。
さらには、成年後見に関わる相談など専門知識が必要とされる業務の範囲も拡大してきており、介護業界においてもそれに対応できる人材が、いま以上に求められています。
このように介護の現場がさまざまに変化し、また介護業界の人・ソフト面の新陳代謝も進むなかで、「介護サービスの質の維持・向上を持続的に担うプロとしての、介護福祉士の社会的地位の向上」をこれまで以上に進める必要がある、と国は考えているようです。
基本的に、「介護福祉士」を介護業界における基本的・中核的資格と位置づけ、ホームヘルパーらに対しても、将来的に介護福祉士へのステップアップを促していくとしています。
そのような現状を背景として、平成19年(2007年)11月には「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、厚生労働省は介護福祉士の資格取得要件を厳しくする方針を打ち出しました。
これまでは専門養成施設の卒業生は無試験で介護福祉士となる途がありましたが、新たな資格取得制度の実施後は、例外なくすべての人に国家試験の受験義務が課せられることになります。
また、ホームヘルパーに対する研修制度も、あわせて大幅な改定が行われています。
資格改正のポイントについては、 介護福祉士とホームヘルパー、資格取得要件の見直し(2) でご説明します。
【追記】
「介護福祉士の資格取得方法の見直し」の実施は、平成27年(2015年)4月まで3年間延期されることになっていましたが、平成26年(2014年)6月に成立した「地域医療・介護総合確保推進法」により「実施がさらにもう1年延期」され、第29回試験[平成29年(2017年)1月]からの実施となりました。
したがって新制度にもとづく平成29年(2017年)1月の試験までは、現行制度のままとなります。
(これにあわせ、450時間以上の「介護職員実務者研修」の義務づけも、1年間の先送りになりました。)
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