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介護福祉士とホームヘルパー、資格取得要件の見直し(2)



介護福祉士資格試験において、取得の要件が平成28年(2016年)度から厳しくなります。


介護福祉士の資格取得方法の見直し」の実施は、平成27年(2015年)4月まで3年間延期されることになっていましたが、平成26年(2014年)6月に成立した「地域医療・介護総合確保推進法」により「実施がさらにもう1年延期」され、第29回試験[平成29年(2017年)1月]からの実施となりました。


したがって新制度にもとづく平成29年(2017年)1月の試験までは、現行制度のままとなります。

(これにあわせ、450時間以上の「介護職員実務者研修」の義務づけも、1年間の先送りになりました。)


介護福祉士の資格を取得するには、

「実務経験ルート」(3年以上の実務経験を経た後に、国家試験に合格)
「養成施設ルート」(養成施設の卒業と同時に、資格が取得できる)
「福祉系高校ルート」(福祉系高校を卒業後、国家試験に合格)

の、3つの資格取得のルート(道のり)があります。

介護福祉士国家試験 資格取得ルート図(社会福祉振興・試験センター)


このうち最も多くの資格取得者を出しているのが「実務経験ルート」で、その次が「養成施設ルート」です。


なかでも、特に「実務経験ルート」による取得は、実務経験だけあれば受験資格を得られたことから、必ずしも介護福祉士にふさわしい一定水準の知識・技術を有していると言えないのではないか、との批判がありました。

したがってこの「実務経験ルート」に、「研修期間6ヶ月以上、研修時間にして450時間の実務者研修」が、今後義務づけられることになりました。


ただし、「実務経験ルート」で受験する相当数が実際に忙しい介護の現場で働いているため、450時間もの実務者研修を課すのは、負担の大きい話です。


介護業界における人材の確保が難しい状況も続いていることから、さらに時間をかけて人材の資質向上策を検討するため、実務者研修の義務づけの実施もさらに1年間先送りされ、平成29年(2017年)1月試験からとなったわけです(なお実務者研修自体は、すでに教育機関等で先行的に実施されています)。


結論として、「実務経験ルート」で介護福祉士になるには、第29回試験(平成29年1月)からは以下の3つが必須になります:

実務経験3年以上」+「実務者研修(450時間)」+「国家試験(筆記)合格(実技試験は免除) 」



また「養成施設ルート」においても、学校を卒業さえすれば無試験で資格を得られることについて、同様の批判がありました。

4年制大学などの「養成施設ルート」においても国家試験を課すことが、平成28年(2016年)度からさらに延期されました。おそらくは延期期間も、数年程度伸びる見通しです。


以前は卒業と同時に無試験で資格が得られたものが、今後は国家試験が必要となると、大学や養成校の志願者減少というマイナスの影響も出てくることが予想されます。

一方で人材の質の低下も避けたいため、さらなる検討期間を置くことが必要と判断されたようです。

 

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ホームヘルパー制度についても、すでに見直しが行われています。


平成25年(2013年)4月から、これまでのホームヘルパー2級の研修過程が「介護職員初任者研修(130時間)」へと、名称が変更されています。

(なお、すでにホームヘルパー1級・2級の資格を持っている人看護師等の有資格者は、この介護職員初任者研修を修了したものとみなされます。)


また、ホームヘルパー2級では研修の終了で資格を取ることができましたが、今後は「介護職員初任者研修修了試験」に合格してはじめて、資格を取得できることとなりました。

(ちなみにホームヘルパー3級は、平成21年(2009年)4月の介護報酬廃止によりすでに廃止されています。)


加えて「ホームヘルパー1級」「介護職員基礎研修」は統合され、「介護職員実務者研修に一本化されました。

(都道府県が事業者を指定し実施していた「介護職員基礎研修」は、これまでヘルパー制度の上位概念に位置づけられ実施されてきましたが、この一本化によって無くなりました。)


この実務者研修の研修時間は合計「450時間」です。ただし、初任者研修や介護職員基礎研修の修了者・ヘルパーの資格取得者らは、それぞれに応じ研修の一部が免除され、より少ない時間で修了できます。


ホームヘルパーが「在宅介護」の技術習得が目的となっていたのに対し、上記の介護職員研修は、「在宅介護・施設介護の双方で共有できる技術」の習得を目的としています。


ちなみに「ホームヘルパー」の呼び名は資格制度上は無くなったものの、将来的に(特に利用者に)どのような一般的名称で呼ばれることになるかは、まだ判然としていません。


まとめると、これまで資格取得のシステムであった「ホームヘルパー1級・2級」および「(1級・2級共通の)介護職員基礎研修」が無くなり、

「初任者研修」→「実務者研修」→「介護福祉士」→「(将来の)認定介護福祉士」

と、シンプルなステップアップ方式に再編成された
わけです。


国は介護福祉士の上に「認定介護福祉士(仮称)」を設けることを、すでに表明しています(詳細は資格の概要と、有資格者の現状(1) ご参照)。

以上、介護福祉士を名実ともに介護業界の中核的存在とするべく、その資格取得要件を厳しくして、介護業界でのキャリアアップが最終的に介護福祉士(将来的には、認定介護福祉士)となるよう、道筋をつけています。


ただしこの資格要件の見直しについては、問題点も指摘されています。

まず、介護福祉士を受験する側にとっては、受験までのハードルがあがった分だけ、金銭的にも時間的にも負担がそれだけ大きくなるはずです。


介護福祉士という資格のステータスは、今回の変更によって(認定)介護福祉士を頂点とする構造が明確に設定されたため、今後さらに上がっていくと思います。

しかし、社会的ステータスの増加した分だけ、待遇や報酬の増加、および現状の過酷な長時間労働の緩和措置などもセットで付与していかない限り、苦労のわりに報われない」「割に合わない」ということになってしまい、よほど社会的使命感の強い方しか、試験にチャレンジしなくなる恐れがあります。


介護予防関連の資格と現状 でも記したとおり、現時点においてさえ、介護福祉士の資格保有者の半分が介護業界以外の職についている状況です。


したがって、勤務時間や待遇など他の諸条件を据え置いたまま資格取得要件だけを厳しくしたのでは、ただでさえ人手不足の介護業界が、さらに困難な環境に置かれることになるのでは...と懸念する声も、すでに聞こえてきています。


介護業界をとりまく状況が急速に変化していることもあり、介護のスペシャリストを育成する仕組みを強化していこうという国の理念自体はよいとしても、使命感をもって介護業界に身を捧げようとする側に報いることのできる仕組みを、並行するかたちで整えていけるのかどうか。


この介護職員研修に数十~数百時間の時間と何十万円もの金銭を費やして参加しようとするほどに、介護業界への参加を強く希望する人が、果たしてどれくらいいるのか。


また現在介護業界で活躍しているヘルパー1級・2級の有資格者に対して、「最終的に介護福祉士の資格をとらない限り、介護業界で働きつづけることが難しくなる」という逆のメッセージをおくるかたちになってしまい、彼らのやる気を削ぐ恐れがあるのではないか。


問題解決の有力な方向性のひとつは「介護福祉士の社会的ステータスや待遇を現状から大きくアップさせること」とされていますが、現状に照らして大胆・スピーディにそれを実行することが可能かどうか。


これを実行するには、相当思い切った政策面での舵取りが必要になりそうです。


質の高い介護予防サービス・介護サービスを受けたいと願う利用者の側としても、今後の事態の推移を注意深く見守る必要がありそうです。


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