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すべての記事は⇒こちらから介護保険の予防給付(介護予防サービス)の概要
平成12年(2000年)にスタートした介護保険制度は、もともとは高齢化が急速に進むなか、医療費の膨張を防ぐ意図のもと設計された制度でした。
しかしながら、当初の想定の倍を超えるスピードで介護サービスの利用者が増加する事態に直面し、介護費用の大幅増を抑制するためにも制度の手直しが必要になりました。
こうして「介護予防重視の姿勢」を理念のひとつに掲げた介護保険法の改正が、平成18年(2006年)4月に行われました。
これによって、高齢者が要介護状態となることから生じる介護費用の増大を抑制すべく、要介護認定の区分をそれまでの5区分(要介護1~5)から、新しく「要支援1・2」を加えた7区分とすると同時に、「要支援者(認定で要支援1・2に該当した方)」を対象とした「予防給付(介護予防サービス)」が、新たに提供されることになったのです。
平成27年(2015年)の介護保険法の改正により、「介護予防訪問介護」・「介護予防通所介護」の2サービスは、平成30年(2018年)3月末までに国の介護保険の予防給付から外れ、市区町村の地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)へと移行します。
これにより移行完了後は、この2サービス内容も単価も市町村の判断で決められることになります。
なお上記の2サービス以外は、従来どおり介護保険の予防給付の枠内で行われます。
「要支援者」は、要介護状態が軽度であって、状態が重度にならないよう予防に重点を置くことによって対処できる状態、という位置づけになっています。
提供されるサービスも、要支援者用として用意された「予防給付」から支給され、以前から「要介護者」用のサービスメニューとしてある「介護給付」を利用することはできません。
「予防給付(介護予防サービス)」の内容は、以下のとおりです。
(なお個々のサービス内容については、各サービスの具体的内容について(1) 以降で解説します。)
●介護予防支援(介護予防ケアマネジメント)
●都道府県が指定・監督を行う、介護予防サービス
【通所サービス】
▽「介護予防通所介護(介護予防デイサービス)」→※2018年3月末までに、市町村の地域支援事業(総合事業)へ移行を完了
▽「介護予防通所リハビリテーション」
【訪問サービス】
▽「介護予防訪問介護(介護予防ホームヘルプサービス)」→※2018年3月末までに、市町村の地域支援事業(総合事業)へ移行を完了
▽「介護予防訪問リハビリテーション」
▽「介護予防訪問入浴介護」
▽「介護予防訪問看護」
▽「介護予防居宅療養管理指導」
【短期入所サービス】
▽介護予防短期入所生活介護
▽介護予防短期入所療養介護
【その他のサービス】
▽介護予防特定施設入居者生活介護
▽介護予防福祉用具の貸与
▽特定介護予防福祉用具購入費の支給
●市町村が指定・監督を行う、地域密着型介護予防サービス
▽介護予防認知症対応型通所介護
▽介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
▽介護予防小規模多機能型居宅介護
●介護予防住宅改修費の支給(都道府県・市町村の指定不要)
予防給付(介護予防サービス)の名称は、ほとんどがこれまでの介護給付のサービスの名称の冒頭部分に「介護予防」が付くスタイルになっています。
たとえば介護給付の「訪問介護」が、予防給付においては「介護予防訪問介護」になり、同じく「通初介護」は、予防給付では「介護予防通所介護」になる、といった具合です。
しかし名称が似ていても、予防給付(介護予防サービス)はこれまでの介護給付に比べて異なる点が多く、残念ながらその使い勝手も悪くなっています。
言い換えると、提供されるサービス内容が「介護給付」に比べてぐっと軽量化しているわけです。
サービスごとに利用の上限が決められていることから、あるサービスの利用回数を減らした分を他のサービス利用に回す、といったこともできません。
介護サービスを提供する側の介護事業者に対して支払われる予防給付の「介護報酬(ほぼ介護事業者の売上にあたるもの)」は、「月単位の定額制」となっています。
そのため介護事業者側としても、採算ラインに乗せるべく利用時間や利用回数を制限している実情があります。
その結果、とりわけ要介護認定の更新時において「要介護」から「要支援」へと変更となった利用者は、週あたりの利用できる回数や時間が、それまでと比べ大幅に減ってしまうケースが全国的に出てきています。
このため、要介護認定のやり直しを求めて自治体に「区分変更申請」を求める利用者も増えてきています(このあたりの事情については、姉妹サイト内記事 要介護認定の流れ・申請時の注意点~2009年4月の基準見直しの影響 もご参照ください。)。
さらには「通初介護」と「介護予防通所介護」のように、サービス提供の仕組みや内容が違う場合もあります。
(「通初介護」は、入浴・食事・リハビリなどが主なサービスであるのに対し、「介護予防通所介護」においては「共通的サービス」に加えて、「選択的サービス」の中から利用者がオプションとして運動や栄養にかかわるサービスを選ぶ。)
介護保険においては、7段階の要介護度別に、1ヶ月あたりの利用金額の上限が設定された、サービス利用のための「支給限度額」があります。
予防給付(介護予防サービス)にかかわる1ヶ月あたりの支給限度額(標準額)は要支援1(50,030円)・要支援2(104,730円)と、要介護1~5の支給限度額(166,920円~360,650円)に比べぐっと少なくなっています。
この上限を超えなければ、介護保険における自己負担割合は1割で済むのですが、もし超えてしまった場合は「超えた分が全額」利用者の自己負担となってしまいます(ただし「介護予防住宅改修費」や「介護予防福祉用具購入費」のように、要介護度別の支給限度額と別枠で支給限度額が決められているサービスも一部あります)。
(ちなみに介護保険法の改正により、平成27年(2015年)8月からは、一定以上の高所得者の自己負担割合が「2割」に引き上げられました。平成27年(2015年)の介護保険改正(2)~利用者負担と補足給付の見直し 参照)
したがって、介護予防サービスの利用にあたっては、地域包括支援センターに「介護予防ケアプラン」を作成してもらうときに、この限度額をオーバーしないよう、利用回数や一回あたりの利用時間も注意して職員とよく相談しながら決めていくことが大切になります。
次の記事は「各サービスの具体的内容について(1)」です。
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