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すべての記事は⇒こちらから介護予防関連の資格と現状
介護予防に関わる資格には、国家資格、都道府県などが実施・認定するいわゆる公的資格、そして民間団体が独自に実施する民間資格、があります。
それらをすべてあわせると、介護専門の資格数は数十種類にも達しますが、当サイトでは介護予防に特にかかわりの深いいくつかの資格をとりあげて、ご紹介します。
しかしその前に、介護業界の有資格者をとりまく厳しい現状について、皆さんはご存知でしょうか?
介護専門の資格は、数年間の実務経験を受験要件として課している資格も多く、有資格者自身が「介護業界のプロフェッショナル」として誇りの持てる資格が多く存在することは、なんら疑いはありません。
しかしながら、これらの資格の魅力をアピールする以前の背景として、「介護業界から離職する人の数が、全国的に増加の一途」という深刻な構造的問題が、いまクローズアップされています。
団塊世代全員が75歳以上となる2025年度の要介護者数は、およそ700万人。
高齢化のピークとも言われる時期に必要と見込まれる介護職員数は250万人で、現状に照らして30万人程度の不足が生じるとも言われています。
その回避のために今後年間約6~7万人のペースで、介護労働者を増やしていく必要があるにもかかわらず、です。
介護保険における介護報酬の低さに起因し、介護職につく方々にとってはここ数年来、待遇面や現場の労働環境面において、極めて厳しい状況が続いています。
「介護専業では生活が苦しい」という経済的事情から、介護職とかけもちで他の仕事に従事している方の数も少なくありません。
このような背景のもと、いったんは希望と使命感を胸に就職しても「厳しい労働環境と、高齢者の人生を預かるという重い責任にさらされているにも関わらず、重労働・低待遇」という現在の業界の構造に嫌気がさすのか、いまやあらゆる介護職において、有資格者・無資格者を問わず極めて短い期間で離職する人の数が、全国的に増加しつつあります。
これこそが介護業界の今日、そして今後においての大きな問題となっているのです。
介護専門の資格においては、介護福祉士の養成学校等においても入学率が年々下がってきており、またいくつかの介護関連資格では専門学校においても大幅な定員割れを起こすなど、まったくもって不人気な資格の数も、いまや少なくありません。
平成17年(2005年)に介護福祉士の資格を取得した約47万人中、実際に介護関連の分野で働いているのは27万人にすぎず、有資格者の半数近くが介護業界と無縁の仕事に就いているというデータもあります。
このような傾向は長期的にみて、この日本における介護のインフラ・介護サービスの専門性を損なうだけでなく、ひいては「介護崩壊」という深刻な社会不安にすらつながりかねません。
そして最終的にそのしわ寄せは、よい介護サービスを適切な価格で利用したいと望む多くの消費者の方々のもとにやってくることになるのです。
介護現場の人材不足を解消することを狙った「介護従事者処遇改善法」もすでに成立しているものの、内容の具体性には乏しく、とても直接的な効果を期待できそうにはありません。
介護の現場では、有資格者・無資格者を問わず、介護従事者の処遇改善を強く求める声が、日増しに高まってきています。
介護事業者に支払われる「介護報酬」の5回目の改定が平成27年(2015年)4月に行われ、前々回・前回と続いた「プラス改定」が全体で2.27%減と、ふたたびマイナス改定に逆戻りしました。
国は職員の賃金に月額平均で1.2万円の加算を盛り込んだことで介護職員の待遇改善を引き続き強調しているものの、介護施設の経営状況いかんで年収ベースにおける引き下げもあり得ることから、その効果に懐疑的な見方もあるようです。
(姉妹サイト内記事 介護報酬の改定が、介護施設の利用者にもたらす影響。 ご参照)
いずれにせよ、これからますます重要となる介護予防サービスの品質の維持・向上のためにも、介護業界にすぐれた人材が集まってくるようにするための職場環境の改善と、給与水準・待遇面を中心とした介護業界のインフラ整備が、もはや待ったなしの状況となっています。
これらの施策が現実に実行されることではじめて、介護予防関連資格の志願者数、そして介護専門の資格取得者としての誇りを胸に介護業界で働く人の数も、ふたたび増加に転じていくことでしょう。
次の、 資格の概要と、有資格者の現状(1) では、個々の介護予防関連資格の概要と、有資格者がおかれている現状についてご説明します。
次の記事は「資格の概要と、有資格者の現状(1)」です。
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