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すべての記事は⇒こちらから認知症予防~国・市町村・個人それぞれの取り組み
いまや国民的な関心事となっている「認知症」。TV番組や雑誌の特集など、日々の生活でこの話題を見かけないのが珍しいくらいです。
超高齢社会を突き進むこの日本で、一人ひとりが現実に自分に降りかかるリスクとして、それだけ認知症の心配をしているということなのでしょう。
厚生労働省は、10年後の2025年の認知症患者数はおよそ700万人に達すると推計しています。
現状で認知症への決定打となる治療法・予防法ともに、まだ発見されてはいません。
もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン(政府広報オンライン)
発症後の進行を遅らせるとされる数種類の薬と、認知症予防に良いだろうと言われる食品や生活習慣等が、あれこれと提示されているに留まります。
厚生労働省の調査によると、要介護状態になる原因として最も多いのが「脳血管疾患(24.1%)」、第2位が「認知症(20.5%)」となっています。
もはや「介護予防イコール、脳の病気の予防・認知症の予防」と言っても、過言ではない状況です。
要介護者等の状況~平成22年国民生活基礎調査(厚生労働省)
国は2015年に、今後の10年間をターゲットに定めた認知症対策として「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」を打ち出しています。
その中でも興味深いのは、治療の場を「病院」から「地域の専門職チーム(認知症初期集中支援チーム)」にシフトしようとしている点です。
国民医療費の増大を抑える狙いがあるのは当然としても、病院や専門施設での治療が必ずしも病状の好転を招かないことや、環境を大きく変えることがかえって認知症を悪化させ本人の生活の質を損ないかねないことへの配慮、といった側面もあるのでしょう。
新オレンジプランの柱としては、「認知症予防の推進」「若年性認知症対策の強化」等も掲げられています。
若年性認知症とは(若年性認知症コールセンター)
国の施策は私たちの住む自治体レベルに展開され、今後は市区町村開催の「認知症の予防教室」や民間企業に委託した「認知症予防プログラム」等も、ますます増えてくることでしょう。
地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組事例(厚生労働省)
認知症では実際の症状が発現する10数年前から、脳内のアミロイド物質の沈着等による神経障害が始まっている、とのことです。
したがって認知症を発症する前、「軽度認知機能障害(MCI)」と呼ばれる時期あるいはそれ以前に認知機能の低下を予防することが最善というのが、医療界の今日的な見解です。
【PDF】認知機能低下予防・支援マニュアル(厚生労働省)
いずれにせよ、介護予防においては身体的機能のメンテナンスについ気を取られがちですが、「脳の認知機能の衰えの予防」もまた非常に大切であることを、肝に銘じておきましょう。
認知症予防の10ヵ条(認知症予防財団)
すでに40~50歳代で糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を患っている人は、早期の治療・改善をはかり、将来的な脳血管疾患の発症リスクを減らすように心がけたいものです。
最後に、それぞれの生活シーンで「つい見落としがちな」認知症予防のポイントを追記しておきましょう。
【食事】
●良く噛んで食べる~咀しゃくが脳を活性化させる(誤嚥性肺炎の予防も兼ねる)。
●食事は偏らず、栄養のバランスを考えて。肉も炭水化物も、度を越さない程度に摂取が必要。
●野菜の摂取量は一日平均350グラム以上を目指す(厚労省推奨の目標値)。
●サプリや単品の機能性食品等に、過度に頼らないこと。
【運動】
●ウォーキングなどの「運動」が認知症予防には最も確実な方法のひとつであることは、数多くの研究によって実証されている。
●筋肉量を減らさないため、週1~2回程度の「筋トレ」も忘れないこと。
●運動は認知症予防と介護予防の双方を兼ねている。どちらも続けることが大事。
【知的活動】
●ゲーム・数独などの計算ドリル・カラオケ・音楽・園芸・旅行・料理など、将来にわたって長く楽しめる知的活動を選ぶ。
1人で行なうのもよいが、何人かでコミュニケーションを取りながらがベター。
●「義務的にやらないこと」が大切。嫌いなこと・興味の無いことを無理に続けても、脳の活性化につながらない。
●本人(の脳)が心よい刺激を感じられるようなものを選び、終わった後にある種の達成感・満足感を得ることが大切。
【コミュニケーション(社会的接触)】
●外に出て、人とのかかわりによるコミュニケーション(社会的接触)を活発化させる。
●他愛のない世間話・おしゃべりを楽しむことは、脳機能を活発化させるために大切。特に男性は自分が所属する層の外に対しては心を閉ざしがちなので、若いうちからの練習を心がけたい。
●MCIの人が物忘れを周囲から何度も指摘され、家に閉じこもりがちになると、かえって認知症が悪化する恐れがある点に注意。
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